ルーツロックレゲエ

基礎知識
  1. ルーツロックレゲエの起源
    ルーツロックレゲエは1970年代のジャマイカで誕生し、ラスタファリズムや社会的・政治的メッセージを核にして発展した音楽である。
  2. レゲエのリズムとビート
    ルーツロックレゲエは、特有の「ワン・ドロップ」リズムと強いベースラインによって、他の音楽ジャンルと差別化されている。
  3. ボブ・マーリーの影響
    ボブ・マーリーはルーツロックレゲエを世界的に広めた中心人物であり、その音楽とメッセージは、社会的な不平等や人種差別への抵抗を訴えたものである。
  4. ラスタファリズムとの関係
    ルーツロックレゲエは、ラスタファリズムの思想を音楽を通して表現し、黒人のアイデンティティアフリカ回帰、精神的解放などをテーマにしている。
  5. ダブの誕生と影響
    ルーツロックレゲエから派生したダブは、リミックス技法を使い、インストゥルメンタルとエフェクトを重視したサウンドで、現代のエレクトロニック音楽にも大きな影響を与えた。

第1章 ジャマイカの音楽的ルーツ

カリブ海から生まれた音楽

ジャマイカは美しいビーチだけでなく、独自の音楽を育んできた島である。17世紀から20世紀初頭にかけて、アフリカから連れてこられた奴隷たちが、リズムとビートの感覚を持ち込んだ。彼らの音楽は、労働の中で歌うワークソングや、精神的なつながりを表現する儀式音楽など、多彩で力強いものだった。さらに、アフリカの伝統的なビートと、ヨーロッパからもたらされた楽器が融合し、次第にジャマイカ独自のサウンドが生まれていく。この島の音楽土壌は、後に世界を席巻するレゲエの誕生を可能にした。

スカとロックステディの登場

1950年代から1960年代にかけて、ジャマイカでは「スカ」という新しい音楽が誕生した。スカは、アメリカのジャズやブルース、リズム・アンド・ブルース(R&B)から影響を受けつつ、ジャマイカの強いビートを融合させたアップテンポな音楽である。代表的なアーティストにはプリンス・バスターやデューク・リードなどがいる。その後、テンポを少し落とし、よりソウルフルで感情的なサウンドに進化したのが「ロックステディ」である。アルトン・エリスやザ・パラゴンズのようなアーティストたちがこのスタイルで活躍し、次第にレゲエへの道を開いていく。

ジャマイカの社会と音楽の関係

ジャマイカ音楽は常に、その社会的背景と深く結びついている。植民地支配や貧困政治的な混乱は、音楽のテーマや歌詞に大きな影響を与えた。スカの時代、ジャマイカはようやくイギリスから独立を果たしたばかりで、若者たちは新たな自信と希望を音楽で表現していた。しかし、独立後も貧困や不平等は残り、人々の不満が音楽に現れるようになる。ロックステディの歌詞には、恋愛だけでなく、労働者階級の厳しい現実や、政治的なメッセージも込められていた。音楽ジャマイカの人々の心の声を代弁する手段であった。

新しい時代の始まり

1960年代後半になると、スカロックステディに続き、新しい音楽タイルが登場する。その音楽は、「ルーツロックレゲエ」として知られるようになり、深い社会的・精神的なメッセージを持つものだった。ベースラインが強調され、リズムがゆっくりとした独特のスタイルは、当時のジャマイカの混乱した社会状況を反映していた。ここから、レゲエは単なる音楽ではなく、ラスタファリズムや社会運動と結びついた新たな文化としての地位を確立する。次世代の音楽は、ジャマイカを超え、世界にその声を響かせることになる。

第2章 ルーツロックレゲエの誕生と発展

ジャマイカの不安定な時代

1970年代のジャマイカは、政治的な緊張と経済的困難が混ざり合った時代であった。独立を果たしてからわずか10年余りで、内では対立する政党が激しい争いを繰り広げ、暴力が頻発していた。民は貧困に苦しみ、不安な日々を送っていた。そんな中、音楽は人々にとって重要な避難所となった。ルーツロックレゲエは、ジャマイカの人々の声を代弁し、彼らが直面する苦難を歌詞に込めた。レゲエは単なる娯楽ではなく、希望を与える力強いメッセージであった。

音楽が伝える社会の叫び

ルーツロックレゲエの歌詞は、しばしば貧困や不平等、政治的腐敗に対する抗議であった。ピーター・トッシュの「Equal Rights」や、バーニング・スピアの「Marcus Garvey」など、重要なアーティストたちは、彼らの音楽を通じて人権正義を訴えた。特にラスタファリズムと結びついた歌詞は、黒人の精神的・社会的解放を強く求めた。ルーツロックレゲエは、単なる音楽ジャンルを超えて、ジャマイカの社会的・政治的運動の象徴となったのである。

ラスタファリズムの影響

ラスタファリズムは、ルーツロックレゲエに深く根付いた宗教的・精神的な思想であった。1930年代にエチオピア皇帝ハイレ・セラシエを救世主として崇めるこの宗教は、アフリカへの回帰や、植民地支配からの解放をテーマに掲げた。ルーツロックレゲエの多くのアーティストは、ラスタファリズムの教えに影響を受け、音楽を通して黒人の誇りやアイデンティティを表現した。ドレッドロックスやガンジャ(マリファナ)の使用も、この信仰の一環として象徴的な役割を果たした。

ルーツロックレゲエの国際的な広がり

ルーツロックレゲエは、ジャマイカの枠を超えて世界中に広まることとなった。ボブ・マーリーがその中心的な存在であり、彼の音楽政治人権のメッセージを持っていたため、多くの々で共感を呼んだ。マーリーのアルバム「Exodus」や「Survival」は、際的に高く評価され、レゲエはグローバルな音楽ジャンルとなった。ルーツロックレゲエは、ジャマイカの小さな島から世界へと広がり、今なお影響を与え続けている。

第3章 音楽の核 – リズムとビートの秘密

ワン・ドロップの魔法

ルーツロックレゲエを他の音楽ジャンルと一線を画す最大の特徴は、その独特なリズム「ワン・ドロップ」である。ドラムの「1拍目を抜く」というシンプルだが革新的なアプローチは、リズムに空間を作り出し、ゆったりとした心地よい感覚を与える。ドラマーのカールトン・バレットはこのスタイルのパイオニアであり、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの多くの曲でそのリズムが活かされている。ワン・ドロップは、強いビートを強調する他の音楽とは異なり、聴く者に深いリラックス感と同時に力強さを感じさせる。

ベースラインの存在感

ルーツロックレゲエにおいて、ベースラインはメロディを支えるだけでなく、音楽全体をリードする重要な要素である。例えば、アストン “ファミリー・マン” バレットは、ボブ・マーリーの数々のヒット曲で重厚なベースを提供し、曲に深みとグルーヴを与えた。ベースはリズムとメロディの両方を繋ぎ、音楽の「心臓」として機能する。ルーツロックレゲエでは、ベースが力強く前面に押し出され、リスナーの胸の奥まで響き渡る。これが、他のジャンルでは味わえない独特の音楽体験を生み出している。

ギターとスカンクリズム

レゲエギターには「スカンク」という独自のリズムが存在する。これは、主にリズムギターが担う裏拍を強調したスタッカートのような演奏技法である。このリズムは、音楽に独特の跳ねるようなグルーヴを与える。アーネスト・ラングリンやバニー・ウェイラーといったギタリストがこのスタイルを発展させ、レゲエのサウンドを一層特徴的なものにした。スカンクは、他の楽器とともに複雑なリズムパターンを生み出し、聴く者をリズムの波に乗せる重要な役割を果たしている。

キーボードとオルガンの隠された力

ルーツロックレゲエにおけるキーボードとオルガンの役割は、時に見過ごされがちだが、実は音楽に色彩を与える欠かせない要素である。特にジャッキー・ミットゥのようなミュージシャンが、オルガンを使ってレゲエに独特の温かみと深みをもたらした。オルガンの低とメロディは、ベースとドラムとともに音楽の基盤を作り上げ、空間を埋めるように響く。また、キーボードはメロディの装飾や即興演奏を行い、曲の中で予測できない新しい展開を生み出す役割も担っている。

第4章 ラスタファリズムとルーツロックレゲエ

ラスタファリズムの誕生

ラスタファリズムは、1930年代のジャマイカで誕生した宗教的・精神的な運動であり、特にルーツロックレゲエと深く結びついている。この宗教の核となるのは、エチオピアの皇帝ハイレ・セラシエを「救世主」として崇拝し、アフリカを黒人の精神的故郷と考える思想である。ジャマイカ植民地時代の抑圧と奴隷制度の歴史を背景に、ラスタファリズムは黒人の誇りと解放を訴える運動として広まった。この思想がルーツロックレゲエの歌詞やメッセージに大きな影響を与え、音楽が単なる娯楽を超えて、社会的なメッセージを発信する手段となった。

音楽に反映される精神的メッセージ

ルーツロックレゲエの歌詞には、ラスタファリズムの思想が色濃く反映されている。アーティストたちは「ジャー(Jah)」というの存在を称え、精神的な救済やアフリカへの回帰を歌う。例えば、ボブ・マーリーの「Exodus」や「Redemption Song」は、ラスタファリズムの精神的な旅路と、解放を求める人々の声を代弁している。歌詞の中で語られる「バビロン」は、西洋の抑圧的な社会を象徴し、それに抗う姿勢が強調されている。ルーツロックレゲエは、このような哲学的メッセージを通じて、多くの人々に精神的なインスピレーションを与え続けている。

黒人アイデンティティの再確認

ラスタファリズムは、黒人の誇りとアイデンティティを強調する思想であり、それがルーツロックレゲエにも反映されている。アーティストたちは、アフリカジャマイカ人としてのルーツを大切にし、その文化や歴史を讃える歌を多く残している。特にバーニング・スピアの「Marcus Garvey」などは、アフリカ系指導者マーカス・ガーベイを称え、黒人の精神的復興を訴えるものである。音楽を通じて、ルーツロックレゲエは黒人コミュニティに希望を与え、アイデンティティの再確認を促す重要な役割を果たした。

シンボルとしてのドレッドロックスとガンジャ

ルーツロックレゲエのアーティストたちが身につけるドレッドロックスや、宗教的儀式としてのガンジャ(マリファナ)の使用も、ラスタファリズムの象徴的な要素である。ドレッドロックスは、自然と調和し、精神的な純粋さを追求するラスタファリズムの教えを体現する髪型である。また、ガンジャは、聖な植物とされ、瞑想や祈りの際に使われる。これらのシンボルは、ルーツロックレゲエのアーティストが音楽を通じてラスタファリズムを表現し、聴衆と共有するための重要な手段となっている。

第5章 ボブ・マーリーとルーツロックレゲエの世界進出

一人の青年が世界を変える

ボブ・マーリーは、ジャマイカの小さなナイン・マイルで生まれたが、彼の音楽境を越えて世界中に広がった。彼のキャリアは1960年代に始まり、ザ・ウェイラーズというバンドと共に活動していた。当時は、まだ際的な成功には程遠かったが、彼のメッセージは明確だった。彼は音楽を通じて、ジャマイカの人々の苦しみや希望を表現し、社会的な不平等に対する強いメッセージを発信し続けた。そして、1970年代に入ると、彼の音楽は世界中のリスナーに共感を呼び、彼を際的なアイコンへと押し上げた。

レゲエが世界へ広がった瞬間

1973年、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズは「Catch a Fire」というアルバムで際的な注目を集める。これが、レゲエが世界の舞台に立つ大きなきっかけとなった。アルバムは、イギリスやアメリカの音楽シーンでも高く評価され、マーリーのメッセージが広がり始める。この時期、彼の音楽は単なるエンターテイメントではなく、抑圧に対する抗議の手段となった。彼の歌詞は、ジャマイカだけでなく、世界中の社会的に困難な状況にある人々に向けられており、その力強いメッセージは、レゲエを世界中に広めた要因の一つである。

音楽と政治の融合

ボブ・マーリーは、音楽を通じて政治的メッセージを発信し続けた。1978年、ジャマイカのキングストンで開催された「One Love Peace Concert」では、対立する政治指導者であったマイケル・マンリーとエドワード・シアガを舞台に呼び、手をつないで平和を訴えた。この象徴的な瞬間は、彼の音楽が単なる政治的抗議だけでなく、平和と団結のメッセージを持っていることを示している。彼のこうした活動により、マーリーは音楽政治の架けとなり、彼のメッセージは全世界に響き渡ることとなった。

永遠に響くレガシー

1981年、ボブ・マーリーは36歳という若さでこの世を去ったが、彼の音楽とメッセージは今もなお世界中で愛され続けている。彼の代表曲「No Woman, No Cry」や「Redemption Song」などは、時代を超えて聴かれ、彼の訴えた自由、平等、愛のメッセージは色あせることがない。マーリーは、音楽を通じて社会の不正と戦い、希望を与える存在であった。彼のレガシーは、ルーツロックレゲエを超え、音楽史の中でも特別な存在として永遠に語り継がれていくのである。

第6章 ルーツロックレゲエの代表的アーティストたち

ピーター・トッシュ – 不屈の精神

ピーター・トッシュは、ボブ・マーリーと共にザ・ウェイラーズのメンバーとして活躍し、強い社会的・政治的メッセージを込めた音楽で知られるアーティストである。彼は常にジャマイカ貧困層や抑圧された人々のために声を上げ、「Equal Rights」や「Get Up, Stand Up」などの曲で人権と平等を訴えた。トッシュの音楽は攻撃的でありながらも力強く、聴く者に行動を促すメッセージを含んでいた。彼の不屈の精神は、ルーツロックレゲエの中でも際立つ存在として、多くのリスナーに影響を与え続けている。

バーニング・スピア – 歴史を歌う男

バーニング・スピアことウィンストン・ロドニーは、ルーツロックレゲエの中で最も歴史に忠実なアーティストの一人である。彼は特に、黒人解放運動の指導者であるマーカス・ガーベイに深く影響を受け、「Marcus Garvey」や「Slavery Days」といった楽曲を通じて、黒人の歴史と誇りを歌った。スピアの音楽は、シンプルで重厚なリズムとスピリチュアルな歌声を特徴とし、リスナーに歴史を知り、過去の苦難を忘れずに未来を見据える重要性を伝えている。彼の楽曲は、単なる音楽ではなく、黒人の過去と未来を繋ぐメッセージである。

デニス・ブラウン – レゲエの王子

デニス・ブラウンは「レゲエの王子」として知られ、そのソウルフルで力強い声で多くの人々を魅了したアーティストである。彼は幼少期から音楽の才能を発揮し、「No Man is an Island」や「Love and Hate」といったヒット曲を残した。ブラウンの音楽は、愛や希望、時に痛みをテーマにし、聴く者の心に深く訴えかけるものであった。彼の歌声は、ルーツロックレゲエの中でメロディアスな側面を強調し、感情豊かな表現をもたらした。彼の遺産は今も多くのアーティストに影響を与え続けている。

ブラック・ウフル – レゲエの革命家たち

ブラック・ウフルは、マイケル・ローズ、ダック・ダウンズ、エリック・ドナルドソンの3人によって結成された革命的なルーツロックレゲエバンドである。彼らの音楽は、社会的問題や精神的テーマを中心に展開し、「Sponji Reggae」や「Guess Who’s Coming to Dinner」などの曲で人気を博した。ブラック・ウフルの特徴は、重厚なリズムと独自のハーモニー、そして政治的なメッセージである。彼らの音楽は、ジャマイカだけでなく際的なレゲエシーンにも強い影響を与え、次世代のアーティストたちに多大な影響を残した。

第7章 ダブの誕生とその革新

スタジオの魔術師たち

ダブは1970年代のジャマイカで生まれた革新的な音楽タイルで、レゲエの楽曲を大胆にリミックスすることで新たな世界を作り出した。この革命を牽引したのは、キング・タビーやリー・“スクラッチ”・ペリーなどのサウンドエンジニアたちだった。彼らは、スタジオの機材を駆使して、ボーカルを消したり、ドラムやベースを強調するなど、オリジナル曲を全く違うサウンドに変える技術を編み出した。スタジオは彼らにとって実験室であり、音楽の可能性を無限に広げる場であった。ダブは、を操作することで、聴く者に新たな感覚を提供する「の冒険」だった。

リミックスの革新

ダブの最大の特徴は、リミックスという概念を音楽にもたらしたことにある。キング・タビーは、レゲエのリズムを基にしながらも、エコーやリバーブといったエフェクトを大胆に使い、楽器空間的に響かせることで、全く新しいの体験を提供した。ボーカルが削ぎ落とされた音楽は、より一層ビートやベースラインに集中させる効果があり、聴く者はリズムの深みを感じることができる。ダブは、現代のエレクトロニックミュージックやヒップホップのリミックス文化にも影響を与え、その革新性は今もなお受け継がれている。

レコードの裏側で育まれた文化

ダブは、ジャマイカのサウンドシステム文化と切り離せない存在である。レゲエのシングル盤には、通常A面にボーカル曲、B面にそのインストゥルメンタル版が収録されていた。サウンドシステムのDJたちは、B面のトラックにエフェクトを加えたり、MCがその上でフリースタイルで話すことで、観客を盛り上げた。ダブはこのプロセスから発展し、より洗練されたリミックスが生まれるようになった。ダブプレートと呼ばれる特別なレコードは、サウンドシステム間の競争でも重要な役割を果たし、ジャマイカ音楽文化の一翼を担った。

ダブが与えた世界的影響

ダブの革新は、ジャマイカにとどまらず、世界中の音楽に影響を与えた。特に1970年代後半から1980年代にかけて、イギリスパンロックやポストパンク、そしてダンスミュージックのアーティストたちがダブのエフェクトを取り入れた。さらに、ヒップホップエレクトロニカのジャンルにも、ダブの影響が色濃く見られる。現在でも、ダブのリズムやサウンドの操作技術は、リミックスやプロダクションの基として、多くのミュージシャンによって使われ続けている。ダブは、音楽の枠を超えた「芸術」として、世界にその名を刻んだのである。

第8章 ルーツロックレゲエと社会運動

音楽が運動を支えた時代

ルーツロックレゲエは、単なる音楽ジャンルではなく、社会運動と深く結びついている。特に1970年代のジャマイカでは、貧困政治的対立、暴力が蔓延していた。ボブ・マーリーやピーター・トッシュのようなアーティストたちは、音楽を通じて不平等や抑圧に対する抗議の声を上げた。彼らの歌詞は、政治的メッセージを含んでおり、平和正義を求める人々の共感を得た。例えば、マーリーの「Get Up, Stand Up」は、権力に立ち向かい、自らの権利を主張することの重要性を訴えている。

平和と愛のメッセージ

ルーツロックレゲエには、平和と愛をテーマにしたメッセージも多く含まれている。音楽を通じて、対立ではなく、共存や理解が必要であるという考えが広まった。特に1978年の「One Love Peace Concert」では、ボブ・マーリーがジャマイカの対立する政治指導者たちをステージ上で手をつなぐよう促し、全体に平和象徴を示した。この瞬間は、音楽が実際に政治を動かす力を持っていることを証明し、ルーツロックレゲエが社会に与える影響の大きさを再確認させた出来事であった。

国際的な社会運動への影響

ルーツロックレゲエは、ジャマイカだけでなく、世界中の社会運動にも影響を与えた。特にアフリカやアメリカでは、公民権運動や反アパルトヘイト運動など、多くの活動家たちがレゲエのメッセージに共感した。ピーター・トッシュの「Equal Rights」は、世界中の差別や不平等に反対するメッセージを持ち、際的な公正を求める人々に広く支持された。ルーツロックレゲエ音楽は、言葉を超えて、自由と平等を求める世界中の人々の心を揺さぶった。

新世代に受け継がれるメッセージ

ルーツロックレゲエの社会的なメッセージは、現代でも新しい世代のアーティストたちによって受け継がれている。新世代のレゲエアーティストやラップ、ヒップホップのミュージシャンたちは、ルーツロックレゲエ精神を引き継ぎ、音楽を通じて社会変革を訴えている。例えば、ダミアン・マーリーは父ボブ・マーリーの影響を受け、貧困教育の重要性をテーマにした楽曲を制作している。ルーツロックレゲエは、時代を超え、音楽による平和正義のメッセージを未来へと伝え続けているのである。

第9章 ルーツロックレゲエの現代的意義

ルーツロックレゲエの継承者たち

ルーツロックレゲエは、現代においてもその精神を新世代のアーティストたちが引き継いでいる。ダミアン・マーリーやクロニクスなどのミュージシャンは、父や先輩たちから受け継いだメッセージを現代のリスナーに届けている。彼らは、伝統的なレゲエのリズムに加え、ヒップホップやダンスホールといった新しい音楽要素を融合させ、より広範な層にリーチしている。ルーツロックレゲエの思想は、単なる過去の遺産ではなく、今もなお新しい世代に影響を与え続けている音楽文化である。

フェスティバルで響き渡るレゲエ

ルーツロックレゲエは、世界中の音楽フェスティバルでその存在感を示している。例えば、毎年スペインで開催される「Rototom Sunsplash」やカリフォルニアの「Sierra Nevada World Music Festival」などは、世界中からレゲエアーティストやファンが集まり、音楽文化を共有する場となっている。これらのイベントでは、ルーツロックレゲエが世界的に愛され続けていることが実感される。音楽フェスティバルは、レゲエ精神を次世代に伝える重要な舞台となっており、グローバルな音楽シーンでの存在感をさらに強めている。

グローバル化したレゲエシーン

かつてジャマイカの小さな島で生まれたルーツロックレゲエは、今や世界中の音楽シーンに影響を与えるグローバルなジャンルへと成長した。特にヨーロッパアフリカ、南では、多くのローカルアーティストがレゲエのリズムを取り入れ、各地域の文化と融合させている。フランスのアーティストダニエル・アムランやアフリカのトゥアレグバンド「ティナリウェン」などがその代表例である。ルーツロックレゲエは、地球のあらゆる場所で独自の形に進化し続けており、音楽の多様性を象徴している。

ルーツロックレゲエの未来への期待

ルーツロックレゲエは、これからも新しい音楽のスタイルやメッセージを生み出していく可能性がある。デジタル音楽が主流となった現代でも、レゲエのリズムやメッセージは普遍的であり、多くの人々にとって共感を呼び起こすものである。AI技術やストリーミングサービスの発展によって、レゲエの新しいクリエイティブな可能性が広がっており、これまで以上に多様な音楽が生まれることが期待されている。ルーツロックレゲエは時代とともに進化しながら、その魂を失わずに未来へと歩んでいくのである。

第10章 ルーツロックレゲエの未来 – 継承と発展

デジタル時代の新しい波

ルーツロックレゲエは、デジタル時代に突入してもその魅力を失うことなく進化し続けている。ストリーミングサービスの普及により、ジャマイカや世界中のレゲエアーティストたちは、これまで以上に多くのリスナーにアクセスできるようになった。SpotifyYouTubeなどを通じて、若い世代もルーツロックレゲエを発見し、楽しんでいる。デジタル技術は、音楽制作の面でも革命をもたらし、現代のアーティストは新しいサウンドを作り出すためにエフェクトやサンプルを使って実験的な試みをしている。

新世代アーティストの登場

ルーツロックレゲエ未来を担う新世代のアーティストたちも、伝統を尊重しながら独自のスタイルを発展させている。プロトジェやクロニクスなどのアーティストは、クラシックなレゲエのリズムを継承しつつ、現代的な要素を取り入れたサウンドを作り上げている。彼らは、政治的・社会的なメッセージを含む歌詞を大切にし、ボブ・マーリーやピーター・トッシュといった先駆者たちが築いた道を歩み続けている。新しい世代のアーティストたちは、グローバルな視点からルーツロックレゲエをさらに広めている。

未来のレゲエシーンとフェスティバル

未来レゲエシーンを語る上で、フェスティバルの役割は無視できない。今後も世界各地で開催されるレゲエフェスティバルは、アーティストとファンが交流し、文化を深める重要な場であり続けるだろう。スペインの「Rototom Sunsplash」やアメリカの「Cali Roots」など、レゲエフェスティバルは世界的に拡大し、ルーツロックレゲエの影響力をさらに強めている。これらのイベントは、次世代アーティストが自らの才能を発揮し、レゲエ文化を新しい世代に伝える場として大いに期待されている。

ルーツロックレゲエの永遠のメッセージ

ルーツロックレゲエが今後も成長し続ける理由は、そのメッセージの普遍性にある。平和、自由、愛といったテーマは時代や場所を超えて共感を呼び起こす。未来のアーティストたちは、この強力なメッセージを維持しながら、テクノロジーや文化の変化に応じて進化を続けるだろう。新しいメディアや音楽技術の登場により、ルーツロックレゲエはさらなる創造的な発展を遂げ、未来のリスナーに向けてより深いインパクトを与える可能性を秘めている。