クラシック音楽

基礎知識
  1. ロック音楽の起源
    ロック音楽17世紀初頭にイタリアで生まれ、装飾的で表現力豊かなスタイルが特徴である。
  2. 古典派音楽の特徴
    古典派音楽18世紀後半から19世紀初頭にかけて発展し、形式の均整と調和を重んじる音楽スタイルである。
  3. ロマン派音楽の革新
    ロマン派音楽19世紀感情表現の自由と個人主義を強調し、作曲家が個々のスタイルを追求した。
  4. ベートーヴェンの役割
    ベートーヴェンは古典派からロマン派への渡し役を果たし、音楽史における重要な転換点を作り上げた。
  5. オーケストラの発展
    オーケストラは18世紀から19世紀にかけて拡大し、多様な楽器編成と複雑な楽曲が作曲されるようになった。

第1章 クラシック音楽の起源と初期の発展

古代の音楽、そしてルネサンスへの道

クラシック音楽の物語は、古代文明から始まる。古代ギリシャでは音楽哲学科学と深く結びつき、ピタゴラス音楽の調和に数学的な法則を見出した。この時代、音楽聖であり、社会の精神的な基盤とされていた。そして、中世に入るとキリスト教会の影響で音楽が宗教儀式に欠かせない存在となり、グレゴリオ聖歌が誕生した。これらのシンプルで荘厳な旋律は、ルネサンス期の多声音楽の基礎を築いた。やがて、音楽は教会だけでなく世俗の場でも発展し、次の時代への渡しを担うこととなる。

グレゴリオ聖歌と宗教音楽の発展

中世ヨーロッパにおいて、音楽キリスト教会の儀式と不可分の関係にあった。その中心となったのがグレゴリオ聖歌である。単旋律で歌われるこの音楽は、祈りや瞑想を助ける役割を果たしていた。8世紀から9世紀にかけて、この音楽は体系化され、教皇グレゴリウス1世によって広められたと言われている。宗教音楽はこの後、複雑な多声音楽へと進化し、より豊かなハーモニーを生み出した。ルネサンス期に入ると、宗教的なテーマに加えて、世俗的な要素も取り入れられるようになり、音楽の幅が一層広がっていった。

ルネサンス期の音楽的革新

ルネサンス期は、西洋音楽史において大きな転換点を迎えた時代である。14世紀から16世紀にかけて、芸術科学が飛躍的に発展し、音楽もその影響を受けた。多声音楽技術進化し、複数の旋律が同時に響き合う作品が数多く生まれた。ジョスカン・デ・プレやパレストリーナなどの作曲家が、精緻な対位法を駆使して、美しいの交差を作り出した。また、この時代には楽器音楽も発展し、リュートやハープシコードなどが演奏されるようになった。音楽芸術の中心的存在となり、次なるバロック期の準備を整えた。

音楽の世俗化と新たな広がり

ルネサンス期のもう一つの重要な特徴は、音楽が教会の枠を越えて世俗の世界でも盛んに演奏されるようになったことである。貴族の宮廷や市民の集まりで演奏される音楽は、舞踏曲や恋愛を歌ったマドリガルなど、多様な形式を持っていた。特にイタリアやフランスでは、このような世俗音楽が高い評価を受け、作曲家たちは次々と新しい試みを行った。音楽が広く一般に楽しめるものとして発展した結果、次第にその役割は社会全体に影響を与えるまでに広がっていった。ルネサンスの終わりと共に、音楽はさらなる革新の時代、バロック期へと移行していく。

第2章 バロック音楽の誕生と発展

音楽の劇的な転換: バロックの幕開け

1600年代初頭、ヨーロッパ音楽は大きな変革を迎える。この時代を象徴するのがバロック音楽である。言葉の由来はポルトガル語の「バロッコ」、不規則な真珠を意味し、このスタイルの音楽が持つ豊かな装飾性を表現している。バロック期の初期に登場したオペラは、ドラマチックな物語を音楽で表現する新しい試みであった。特にクラウディオ・モンテヴェルディの『オルフェオ』は、このジャンルの先駆けとして評価され、音楽と物語の融合が観客に驚きを与えた。音楽は一層、感情表現を重視するものへと進化していく。

バッハとバロック音楽の頂点

ロック音楽の最も偉大な作曲家として知られるヨハン・セバスティアン・バッハは、その卓越した技術と独創性で、バロック音楽芸術の頂点へと引き上げた。彼の『マタイ受難曲』や『ブランデンブルク協奏曲』は、その時代の音楽がいかに豊かで深い感情表現を持っていたかを示している。バッハの音楽は、精緻な対位法と複雑なハーモニーを組み合わせ、時に数学的とも言えるほど緻密に構築されている。彼の作品はバロック音楽の集大成であり、後の音楽家たちに多大な影響を与えた。

ヴィヴァルディの四季と協奏曲の革新

アントニオ・ヴィヴァルディもバロック時代を代表する作曲家であり、彼の作品『四季』はクラシック音楽の中でも特に有名である。この協奏曲集は、季節ごとの情景を音楽で描写したものであり、特に「春」の華やかなメロディーは多くの人に愛されている。ヴィヴァルディは、ソロ楽器とオーケストラが対話する形で構成された協奏曲という形式を革新し、協奏曲のジャンルを大いに発展させた。彼の音楽は、ダイナミックでリズミカルな構造を持ち、聴衆を魅了する力に満ちていた。

バロックオペラの誕生と進化

ロック期において最も注目すべき革新の一つはオペラの誕生である。オペラは音楽演劇、視覚芸術の要素を融合させた総合芸術として、バロック時代の人々に新たなエンターテイメントを提供した。クラウディオ・モンテヴェルディがこのジャンルの先駆者となり、彼の『オルフェオ』は話の物語を壮大な音楽にのせて表現した作品である。また、後のヘンデルはイギリスにおいて、オペラを新しいレベルに引き上げ、彼の『ジュリオ・チェーザレ』はオペラ史に名を残す名作となった。

第3章 古典派音楽の確立

古典派の誕生と新しい音楽美学

18世紀半ば、西洋音楽は再び大きな転換点を迎えた。バロックの華やかで複雑な音楽に代わり、古典派音楽が台頭する。古典派は、シンプルさ、均整の取れた構造、そして調和を重視する音楽美学に基づいている。フランツ・ヨーゼフ・ハイドンはこの新しい音楽スタイルの先駆者となり、交響曲や弦楽四重奏を体系的に確立した。彼の作品はシンプルながらも深みがあり、当時の聴衆を魅了した。古典派音楽は、形式の中に抑制された美しさを見出し、リスナーに新しい音楽体験を提供した。

モーツァルトの天才とその影響

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、古典派音楽のもう一人の巨匠である。彼は幼少期から驚異的な才能を発揮し、作曲家、ピアニスト、指揮者として幅広く活躍した。モーツァルトの作品は、交響曲、オペラ、協奏曲、室内楽など多岐にわたり、彼の音楽感情の豊かさと技術的な完璧さで知られている。『フィガロの結婚』や『魔笛』といったオペラは、ストーリーと音楽が見事に融合しており、今でも世界中で上演され続けている。彼の音楽は古典派の美学を極め、後世の作曲家に計り知れない影響を与えた。

交響曲とソナタ形式の確立

古典派音楽において、交響曲とソナタ形式の発展は極めて重要である。ソナタ形式は、主題が提示され、それが展開されるという構造で、バロック音楽の対位法的な複雑さに代わって、明確なメロディーと伴奏の関係が強調される。ハイドンは交響曲を104曲も作曲し、交響曲という形式を確立した。また、彼の友人であり弟子でもあったモーツァルトも、交響曲第40番などでソナタ形式を駆使し、古典派の音楽をさらに深化させた。交響曲は次第に大規模なオーケストラ作品としての地位を確立していった。

ハイドンとモーツァルトの友情

ハイドンとモーツァルトの関係は、師弟関係であり、また深い友情に基づいていた。ハイドンはモーツァルトの才能を心から称賛し、彼の作品を「天才的」と評価した。モーツァルトもまた、ハイドンの影響を強く受けながら、独自のスタイルを確立していった。二人は互いに楽譜を見せ合い、音楽について語り合うことが多く、古典派音楽の発展において重要な役割を果たした。この友情は、音楽の創造が個々の天才だけでなく、互いの影響と交流からも生まれることを示している。

第4章 ベートーヴェンとその遺産

革命的な作曲家、ベートーヴェンの登場

18世紀の終わりに、クラシック音楽の世界に革命をもたらした人物が現れた。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンである。彼の登場は、古典派音楽からロマン派音楽への渡しとなった。ベートーヴェンはウィーンで活動し、師匠であったハイドンから多くを学んだ。しかし彼の音楽は、既存の形式に縛られることなく、より自由で感情豊かな表現を追求していた。彼の『交響曲第3番「英雄」』は、長い楽曲構成とドラマティックな展開で、新しい時代の音楽を予感させるものとなった。これにより、彼は単なる作曲家以上の存在となった。

ベートーヴェンの中期作品とその影響

ベートーヴェンの作曲活動は初期、中期、後期に分かれるが、特に中期は「英雄的時代」と呼ばれ、彼の創作意欲が最高潮に達した時期である。『交響曲第5番』や『ピアノソナタ第23番「熱情」』はその代表作であり、これらの作品は力強く、情熱的で、音楽史において革命的な影響を与えた。彼の音楽は単なるエンターテインメントを超え、人間の感情や苦悩、喜びを描き出す表現手段として機能した。特に『第5交響曲』の冒頭の「運命の動機」は、誰もが知る有名なフレーズであり、彼の音楽が持つパワーを象徴している。

ロマン派への道を開く

ベートーヴェン音楽は、次世代の作曲家たちに多大な影響を与えた。彼の革新的なスタイルは、古典派音楽の枠組みを超え、ロマン派音楽の道を切り開いた。フランツ・シューベルトやフランツ・リスト、そしてリヒャルト・ワーグナーなどの作曲家たちは、ベートーヴェン精神を受け継ぎ、より自由で感情豊かな音楽を追求した。特に、彼が後期に作曲した『交響曲第9番「合唱付き」』は、人類愛と平和をテーマに掲げ、音楽が持つ力を最大限に引き出した作品である。この作品は、ロマン派の理想を具現化したものとして歴史に残っている。

音楽と闘病、聴覚障害との戦い

ベートーヴェンの人生は輝かしい音楽の成功に満ちていたが、その裏には彼の闘病生活があった。特に彼を苦しめたのは、音楽家として致命的ともいえる聴覚障害であった。30代後半にして徐々に耳が聞こえなくなり、絶望に打ちひしがれた。しかし、彼はその障害を乗り越え、音楽を作り続けた。ベートーヴェンの後期作品には、彼の内面の苦悩や葛藤が色濃く反映されており、それが音楽に深みを与えている。彼の不屈の精神は、多くの人々に勇気を与え、音楽史において永遠に語り継がれることとなった。

第5章 ロマン派音楽の興隆

感情の時代へ: ロマン派の誕生

19世紀初頭、音楽は大きな変化を迎えた。古典派音楽の規律と秩序に対して、ロマン派音楽感情と個性を全面に押し出すスタイルが特徴であった。作曲家たちは、自らの内面的な世界や自然話、愛といったテーマを音楽で表現するようになった。フランツ・シューベルトの『冬の旅』などの歌曲は、その代表例である。シューベルトは、詩と音楽を融合させることで、聴く人々の感情を揺さぶる作品を次々と作り上げた。ロマン派は、人間の心の奥深くに触れる音楽の時代を切り開いた。

ショパンとピアノの詩人

ロマン派音楽において、フレデリック・ショパンは「ピアノの詩人」と称される存在である。彼の作品はピアノの可能性を極限まで引き出し、その美しい旋律と複雑な和進行で人々を魅了した。ショパンのノクターンやエチュードは、ピアノの詩的な表現力を最大限に活かしている。彼の音楽は非常に個人的であり、彼自身の孤独や郷愁、愛といった感情が反映されている。特に、彼が生涯を通じて作曲したマズルカやポロネーズなど、故郷ポーランドへの深い愛情が込められた作品群は、彼の感情表現の極致である。

ワーグナーと総合芸術の探求

リヒャルト・ワーグナーはロマン派音楽において、オペラというジャンルを新しい境地に導いた。彼の「楽劇」は、音楽演劇、文学、視覚芸術を一体化させた総合芸術であり、特に『ニーベルングの指環』四部作はその頂点に位置する。ワーグナーは、従来のオペラの形式を超え、音楽が物語全体をリードする革新的な手法を用いた。彼の楽劇は壮大で、登場人物の内面的な葛藤や感情音楽で深く表現している。ワーグナーは、オーケストラの使い方にも大きな影響を与え、劇的な表現力をさらに高めることに成功した。

自然と感情の共鳴: ロマン派の風景

ロマン派音楽では、自然が重要なインスピレーション源となった。作曲家たちは自然を愛し、その美しさや力強さを音楽で描写した。フェリックス・メンデルスゾーンの『フィンガルの洞窟』や、ヘクター・ベルリオーズの『幻想交響曲』は、その代表的な作品である。特に、ベルリオーズの『幻想交響曲』は、主人公が恋に落ちる過程や、や幻覚の中での経験を描いた独創的なプログラム音楽であり、感情と幻想が交錯する世界を音楽で具現化している。自然感情が共鳴するこの時代の音楽は、リスナーに新たな音楽体験を提供した。

第6章 オーケストラの拡大と音楽の革新

オーケストラの規模拡大と新しい音の可能性

18世紀後半から19世紀にかけて、オーケストラはその規模を大きく広げた。古典派時代のオーケストラは弦楽器、木管楽器楽器、打楽器が中心であったが、ロマン派に入るとこれらの編成が一層拡大し、より多彩な色が生まれた。新たにハープ、バス・クラリネット、チューバなどが加わり、の深みと厚みが増していった。この変化により、作曲家はより壮大で複雑な楽曲を作ることができるようになった。オーケストラは、ただの伴奏者ではなく、音楽を演出する重要な要素となった。

ベルリオーズと交響曲の革新

オーケストラの革新において、フランスの作曲家エクトル・ベルリオーズは重要な役割を果たした。彼の代表作『幻想交響曲』は、その斬新なオーケストラ編成と劇的な内容で大きな反響を呼んだ。この交響曲は、主人公が恋に落ちるまでの感情の揺れ動きを音楽で表現しており、特にオーケストラの効果的な使用がその物語性を高めた。ベルリオーズは、音楽の中でストーリーを語る「プログラム音楽」の先駆者であり、交響曲という形式を超えて、音楽に新たな表現力を与えたのである。

マーラーとオーケストラの極限

オーストリアの作曲家グスタフ・マーラーは、オーケストラ音楽の可能性を極限まで押し広げた人物である。彼の交響曲は、しばしば100人以上の演奏者を必要とする大規模な編成を持ち、複雑な構造と多層的な音楽が特徴である。マーラーは、音楽の中に世界全体を表現しようとし、彼の作品には人間の存在、死、生、そして宇宙に関する深い哲学が込められている。特に『交響曲第2番「復活」』は、人生の苦悩と希望を壮大なスケールで描き出し、聴衆に強烈な感動を与えた。

オーケストラの未来とその影響

19世紀から20世紀にかけて、オーケストラの役割は音楽史においてさらに重要なものとなっていった。作曲家たちは、オーケストラの可能性を探求し続け、その色と規模をさらに革新した。オーケストラ音楽は、コンサートホールだけでなく、映画音楽現代音楽にも多大な影響を与えている。特に映画音楽では、ジョン・ウィリアムズやハンス・ジマーといった現代の作曲家がオーケストラを活用し、壮大な物語を音楽で彩る手法が確立された。オーケストラは今もなお、音楽表現の最前線に立ち続けている。

第7章 国民楽派と民族主義の音楽

音楽に刻まれた国家の魂

19世紀ヨーロッパでは、民族主義が台頭し、多くの国々で自国の文化やアイデンティティを再確認する動きが高まった。この流れは音楽にも影響を与え、国民楽派という新しい音楽運動が誕生した。作曲家たちは、自国の民謡や伝統音楽を取り入れ、音楽を通じて民族の誇りを表現した。ロシアのミハイル・グリンカやチェコのベドルジハ・スメタナは、自国の歴史や風景、伝統を音楽に織り込み、その作品を通じて民族的なアイデンティティを確立していった。彼らの音楽は、それまでの欧州中心のクラシック音楽とは一線を画すものであった。

グリンカとロシア音楽の夜明け

ロシアにおける国民楽派の先駆者であるミハイル・グリンカは、自国の伝統音楽に根ざした作風で知られている。彼の代表作『ルスランとリュドミラ』は、ロシアの民話を基にしたオペラで、ロシアの音楽的独立を象徴する作品となった。グリンカは、西洋のクラシック音楽にロシア的な要素を取り入れ、独自の音楽スタイルを確立した。この流れは、後に「ロシア5人組」と呼ばれる作曲家たち(ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフなど)に引き継がれ、ロシア音楽の発展に大きく貢献することとなった。

スメタナとチェコの音楽

チェコの作曲家ベドルジハ・スメタナは、民族主義音楽のもう一人の代表的な存在である。彼の交響詩『わが祖国』は、チェコの風景や歴史を音楽で描写した大作であり、特に「モルダウ」は、チェコの大河モルダウ川をテーマにした美しい楽章で有名である。スメタナは、チェコの民謡や舞踏音楽を取り入れながら、祖国への深い愛情と誇りを音楽に込めた。彼の作品は、チェコの民族意識を高揚させ、国民楽派の精神を広める役割を果たした。

チャイコフスキーと国際的な影響

一方で、ピョートル・チャイコフスキーは、ロシア出身でありながらも、より国際的な作曲家として知られている。彼はロシアの民族音楽を取り入れつつも、西欧のクラシック音楽の伝統を重んじ、独自のスタイルを築いた。彼の代表作『交響曲第6番「悲愴」』やバレエ音楽『白鳥の』は、ロシア的な感性と西欧の形式美が融合した作品である。チャイコフスキーは、民族主義音楽の枠にとらわれることなく、世界中で愛される普遍的な音楽を創り上げ、ロシア音楽を国際的な舞台に押し上げた。

第8章 印象派音楽とその余波

革新的な音楽の夜明け

19世紀末、絵画の世界で印象派が台頭したように、音楽にも新たな潮流が生まれた。クロード・ドビュッシーは、この音楽印象派の先駆者である。彼の作品は、従来の音楽形式に縛られない自由なスタイルを特徴としており、の「色彩」を重視した。『牧の午後への前奏曲』や『海』は、聴く者に具体的なイメージを強く喚起させる作品である。彼の音楽は、和声のルールを大胆に破り、まるで絵画のように風景や感情で描く新しい手法を確立したのである。

ラヴェルの完璧な技術

印象派音楽のもう一人の巨匠、モーリス・ラヴェルは、ドビュッシーとは異なるアプローチで印象派音楽を発展させた。彼は高度な作曲技術を駆使し、洗練された音楽世界を作り上げた。ラヴェルの『ボレロ』は、彼の代表作であり、同じメロディーが繰り返されながら、楽器の編成が次第に豊かになっていく構造が特徴である。シンプルな主題が壮大なクライマックスに向かって発展する過程は、ラヴェルの緻密な作曲技術象徴している。また、彼の作品はバレエやピアノ音楽にも多大な影響を与えた。

音色と感覚の新しい世界

印象派音楽は、色そのものを探求することに重きを置いていた。これにより、従来の音楽では主にメロディやハーモニーに焦点が当てられていたものが、の「質」や「感触」にも注目されるようになった。特にドビュッシーは、ピアノや管楽器の響きに対する深い理解を持ち、彼の音楽はそれ自体が詩のように感じられる。『』などは、その柔らかい色が聴く者に見るような感覚を与える作品であり、印象派音楽髄を体現している。

未来への影響と継承

印象派音楽は、20世紀音楽に大きな影響を与えた。ドビュッシーやラヴェルの革新は、その後の現代音楽映画音楽においても受け継がれている。作曲家たちは、和声やリズムの制約を超えた表現を求め、より自由な音楽の世界を追求した。特に、映画音楽では印象派の影響が顕著であり、映画のシーンに合わせて音楽が色彩豊かに展開される手法が発展した。印象派音楽は、その独自の美学と感覚によって、音楽の新しい可能性を切り開いたのである。

第9章 20世紀の音楽と新たな潮流

革命的な新時代の音楽

20世紀初頭、音楽の世界は大きな転換期を迎えた。伝統的な調性や形式に挑戦する作曲家たちが次々と登場し、音楽の枠を飛び越えた革新が生まれた。特に、イーゴリ・ストラヴィンスキーの『春の祭典』は、複雑なリズムと不協和を大胆に使用し、1913年の初演時には聴衆を衝撃に包んだ。この作品は、従来のクラシック音楽の枠組みを打ち破り、20世紀音楽の道を切り開く象徴となった。新しい時代の音楽は、リズムやハーモニーの自由を追求し、表現の可能性を広げていった。

無調音楽の挑戦

アルノルト・シェーンベルクは、20世紀音楽において無調音楽の先駆者であった。無調音楽とは、従来の音楽の基盤である「調性」を意図的に取り除いた音楽形式であり、伝統的な和声の枠を超える表現が可能となった。彼の『に憑かれたピエロ』は、無調の手法を用いて、まるでの中を彷徨うような独特の世界観を作り出した。シェーンベルクの革新は、多くの作曲家に影響を与え、現代音楽の基礎を築いた。彼の音楽は、既存のルールに囚われない自由な創造力を象徴している。

ジャズとクラシックの融合

20世紀には、クラシック音楽だけでなく、新たな音楽ジャンルとの融合も進んだ。特にアメリカで誕生したジャズは、クラシック音楽に新しい風を吹き込んだ。ジョージ・ガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』は、ジャズのリズムやブルースの要素を取り入れた作品であり、クラシックとジャズの融合の成功例である。ガーシュウィンの作品は、アメリカの都市文化を背景に、クラシック音楽の可能性を広げた。彼の音楽は、伝統と革新が共存する新しい音楽未来を示している。

電子音楽と未来の音楽

20世紀後半になると、電子音楽という新しいジャンルが登場した。電子機器やコンピュータを使ってを作り出す技術は、音楽の表現手段を革命的に変えた。カールハインツ・シュトックハウゼンは、電子音楽の分野で先駆的な存在であり、彼の作品は従来の楽器では不可能な空間を創造した。電子音楽は、現代のポップスや映画音楽にも大きな影響を与えており、音楽未来を見据えた新しいジャンルとして発展を続けている。電子音楽は、テクノロジーと芸術が融合した最先端の音楽である。

第10章 クラシック音楽の未来とその影響

現代社会におけるクラシック音楽の役割

クラシック音楽は、現代社会においてもその重要性を失っていない。デジタル時代に突入した今、音楽はスマートフォンやストリーミングサービスで手軽に楽しめるようになり、クラシック音楽もその例外ではない。若い世代の間でも、ベートーヴェンモーツァルトの作品が再び注目されている。特に映画やテレビCMでクラシック音楽が使用されることが多く、その旋律が視聴者に新鮮な印を与える。こうした現は、クラシック音楽が日常生活に浸透していることを示している。

クラシックとポップスの融合

クラシック音楽とポップスの融合は、近年特に興味深いトレンドである。現代のポップアーティストがクラシック音楽の要素を取り入れることで、新しい音楽が生まれている。たとえば、ロックバンドのクイーンは、オペラ的な要素を取り入れた『ボヘミアン・ラプソディ』で世界中の聴衆を魅了した。また、映画音楽ではハンス・ジマーやジョン・ウィリアムズといった作曲家が、クラシックのオーケストラを活用し、壮大なサウンドトラックを生み出している。これにより、クラシックと現代音楽が共存し、新たな可能性が広がっている。

デジタル時代のオーケストラ

テクノロジーの進化は、オーケストラの在り方にも影響を与えている。デジタル音楽制作ツールやAI技術を活用することで、作曲や演奏の手法が革新されている。特に、ヴァーチャルオーケストラは、世界中のアーティストがリモートで協力し、かつてない規模で音楽を創造することを可能にしている。また、AIを活用した作曲システムが開発され、機械が人間の感性を学びながら音楽を作り出す未来も見えてきている。これにより、オーケストラの未来には新たな可能性が広がっている。

クラシック音楽の未来への展望

クラシック音楽未来は、決して過去の遺産にとどまるものではない。新しい作曲家たちは、現代の社会問題や個人的な感情をテーマにした作品を発表し続けている。彼らは、伝統的なクラシックの形式を尊重しつつも、現代的な要素を取り入れることで、クラシック音楽進化を続けている。音楽教育の場でも、クラシック音楽が重視されており、次世代の音楽家たちが新しい視点でクラシック音楽を再解釈している。クラシック音楽は、時代を超えて人々に感動を与える存在であり続けるだろう。