基礎知識
- 古代アフリカとインド洋交易の要衝としてのジブチ ジブチは古代より紅海とインド洋を結ぶ重要な交易路の拠点で、エジプト、ギリシャ、インドなど様々な文化と関わってきた。
- アファル人とイッサ人を中心とした先住民の影響 ジブチにはアファル人とイッサ人の2つの主要な民族集団が存在し、これらの人々の生活様式や文化が現在のジブチ社会に深く根付いている。
- 19世紀フランスの植民地化とその影響 1862年からジブチはフランスの支配下に入り、現代のジブチの地政学的位置や経済に大きな影響を与えた。
- ジブチ独立と建国後の政治変遷 ジブチは1977年に独立し、独立後は一党制から多党制への移行など多くの政治的変遷を経て現代に至る。
- 戦略的な位置と国際的軍事基地の拠点化 ジブチはその地理的条件からアメリカ、フランス、中国など各国の軍事基地が置かれ、現在の地政学的要所としての役割を担っている。
第1章 古代のジブチとインド洋交易
遠くから訪れるキャラバンたち
ジブチは古代から重要な交易の交差点であった。エジプトやインド、アラビアから訪れるキャラバンが、香料や宝石、象牙などの希少品を積んでこの地を通過した。地中海から紅海を経てインド洋へと至る交易路は、ジブチの港で一息ついた。とりわけ古代エジプトはこの地で得た物産をファラオの墓や神殿の飾りとして用いたとされる。紀元前2千年頃から続くこの交流は、ジブチを単なる土地に留めず、文明が交差する「門」としてその存在感を確立した。ジブチは単に地図上の点ではなく、文化が行き交う場であったのである。
ギリシャとローマの冒険者たち
ギリシャやローマの文献にも、ジブチ周辺地域についての記述が残されている。古代ギリシャの探検家らは、アフリカ大陸の東海岸に果敢に船を進め、ジブチの近辺まで到達したと伝えられている。ローマ帝国時代には、東アフリカの地が「アフリカ・インディア」と呼ばれ、未知の物産地として冒険者たちの関心を集めていた。大プリニウスは著書『博物誌』の中で、アフリカ沿岸部に存在する「豊かな土地」について記している。ジブチ周辺の地は彼らにとって「富の約束地」であり、ジブチは西洋の探検者たちの心を掴んだ。
遥かなるインドとのつながり
インド洋に面するジブチは、インドとの関係においても重要な役割を果たしてきた。とりわけ、インドの香料や絹、宝石は古代から中東を経てジブチに運ばれ、その先のアフリカ内部へと広がっていった。インドの商人たちは季節風を利用して、モンスーンの時期にジブチ近辺まで航海し、交易を活発に行っていた。これにより、インドからもたらされる文化や物品はジブチに新たな影響を与えた。インドとの交易を通じて、ジブチは単なる「中継地」に留まらず、アフリカとアジアを結ぶ架け橋的存在となっていったのである。
交易がもたらした文化の融合
交易がもたらしたのは物産だけではなかった。エジプト、アラビア、インド、ギリシャの人々と接することで、ジブチの文化も多様な影響を受けた。古代の交易者たちはここに仮の住居を構え、異文化の要素がジブチの生活に取り込まれていった。例えば、アラビアから伝わった信仰や建築様式、インドからもたらされた香辛料の使い方などがジブチの生活に根付いている。交易はジブチを「交差点」としての地位に押し上げ、文化の多様性が街に刻まれる一助となったのである。物資の行き交いとともに、人々の考えや風習も交じり合い、ジブチは多様な文化が共存する場となった。
第2章 アファル人とイッサ人の社会と文化
砂漠の勇者たち：アファル人
アファル人は厳しい砂漠地帯で生き抜いてきた遊牧民族であり、独自の誇り高き文化を持っている。彼らはキャラバンを組んでラクダとともに移動し、生活に必要な資源を求めながら日々の営みを続けてきた。アファル人の社会は部族の長が主導する形で成り立っており、結束力が強く、家族や仲間の助け合いが重要視されている。また、伝統的な刺青や独特の装飾品も彼らのアイデンティティの一部であり、彼らの生活様式には自然との調和や古くからの知恵が息づいている。過酷な環境下で生きるアファル人は、ジブチの文化に根強く影響を与えているのである。
交易の民：イッサ人
イッサ人はジブチの海沿いに広がる地域で生活しており、交易活動を通じて経済や文化の発展に寄与してきた。イッサ人は交易に秀でており、古代から紅海を越えてアラビア半島やインドまで品物を運び、他地域の文化や物産をもたらしてきた。彼らの航海技術や交易の知識は、外部との接触が多い環境で育まれたもので、特にアラビア文化やイスラム教の影響を強く受けている。また、イッサ人は詩や音楽を通じて自己表現する文化を持ち、伝統的な舞踊や詩歌は彼らの誇りと喜びである。このようにして、イッサ人はジブチに外の世界とつながる窓をもたらした。
絆を超えた対立と調和
アファル人とイッサ人は、文化的にも生活様式的にも異なるが、ジブチの地で共存を続けてきた。しかし、両者の間には資源の獲得や生活圏の違いから対立が生まれることもあり、時には争いに発展した歴史もある。それでも、ジブチという土地を共に守るために協力し合うことが多く、両者の関係は単なる対立ではなく、共存の道を模索するものとして発展してきた。近年では、互いの文化を尊重し、ジブチの国づくりのために協力する動きが見られ、アファル人とイッサ人は共通の未来を築くパートナーとして歩み始めている。
民族の知恵と文化遺産
アファル人とイッサ人が伝える知恵は、ジブチの文化遺産として今も大切にされている。アファル人の医療知識や自然を尊重する生き方、イッサ人の交易技術や音楽は、現代のジブチ人にも影響を与えている。彼らが持つ伝統的な技術や信仰は単なる過去の遺産にとどまらず、現代の生活の中で実践され、今も生活の一部として息づいている。両民族の知恵や文化はジブチの未来にも受け継がれていくものであり、彼らの存在はこの国をより豊かで独自なものにしている。
第3章 イスラムの影響とジブチの宗教史
イスラムの到来と新たな信仰の誕生
7世紀、アラビア半島で誕生したイスラム教は、紅海を越えてジブチの地に伝わってきた。ジブチがイスラムに出会った背景には、商人たちの果敢な航海があった。ムハンマドの教えを信奉する商人たちは、交易とともにイスラム教をジブチへと伝え、徐々にこの新しい信仰が地域に浸透していったのである。アラビアから来た商人が祈りを捧げる姿に、ジブチの人々は驚きと興味を抱きながらも、彼らの生活にこの新たな教えを取り入れ始めた。これがジブチにとってのイスラムとの最初の出会いであり、その後の社会や文化に大きな変化をもたらしていった。
礼拝の時間がもたらす日常のリズム
イスラム教の広がりとともに、礼拝がジブチの人々の生活に欠かせない要素となった。1日に5回、決まった時間に行われる礼拝（サラート）は、時間を大切にする意識をジブチの人々にもたらした。アラビアの文化が色濃く残るジブチの都市部では、礼拝の時間になるとモスクから礼拝を呼びかける声が響き渡り、人々は一斉に祈りを捧げる。農作業や交易を行う人々にとっても、礼拝は心を清め、日常に秩序をもたらすものとして受け入れられた。イスラム教は単なる信仰の枠を超え、ジブチの生活リズムそのものに深く影響を及ぼした。
聖なる月ラマダンと共同体の絆
イスラム教の重要な行事のひとつに、断食月であるラマダンがある。ジブチではラマダンの間、日の出から日の入りまで食事を控え、人々は忍耐と自制を学ぶ。ラマダンの期間中、日が暮れると家族や友人が集まり、一緒に食事をとることが習慣となり、この時期は人々の絆が一層強まる。特にジブチでは、貧しい者に食事を提供するなど、慈善活動も活発に行われるため、ラマダンは共同体の絆を深める大切な時間となっている。イスラム教の教えが、ジブチの人々の心にどのような影響を与え、地域社会をつなげているかを感じることができる。
イスラム建築とジブチの美学
イスラム教の浸透とともに、ジブチの建築物にもイスラムの影響が色濃く現れ始めた。特にモスクは、礼拝の場であるだけでなく、美しい装飾やアーチが施され、地域の美学の象徴でもある。首都ジブチ市に立つモスクの建物には、アラビアやインドの建築様式が融合した特徴が見られ、彫刻やモザイクが施された壁面は訪れる人々を魅了する。これらのモスクは、ジブチにおけるイスラム文化の象徴であり、訪れる者に神聖な雰囲気と地域独自の美意識を感じさせる。イスラム建築はジブチの街並みに新たな美を加え、歴史の流れとともにその魅力を増してきたのである。
第4章 フランスの植民地支配と現代への影響
植民地時代の始まりとフランスの到来
19世紀半ば、紅海をめぐるヨーロッパ諸国の競争が激化する中で、フランスはアフリカ東海岸のジブチに目をつけた。1859年、フランスの船がジブチに寄港し、交易拠点の確保と経済支配を目指して調査を開始した。やがて1862年には、地元の支配者との条約によりジブチの一部を占有し、フランスはこの地に根を下ろし始めた。こうしてジブチはフランスの植民地「フランス領ソマリランド」として位置づけられ、ジブチの風景や生活は急速に変わり始めた。フランスの到来は、ジブチを植民地支配という新たな歴史へと導いたのである。
インフラ整備と新たな港町の誕生
フランスはジブチを紅海とインド洋をつなぐ戦略的な港として重視し、インフラ整備に注力した。1897年に完成したジブチ港は、エチオピアとの貿易を円滑にするための鉄道の起点にもなり、この路線は後に「アディスアベバ-ジブチ鉄道」として知られるようになった。港と鉄道によってジブチは地域の交通の要衝となり、物資や人々の往来が活発化した。フランスの技術と資本が注ぎ込まれたこのインフラは、ジブチの経済基盤を強化し、その後の発展にも重要な役割を果たすこととなる。港はジブチの新しい顔となり、都市の発展を牽引していった。
植民地支配がもたらした経済構造
フランスによる統治下で、ジブチの経済は輸出と輸入に依存する形で変容していった。ジブチ港を通じて、コーヒーや香料が海外に輸出され、フランス本国からは機械や生活必需品が輸入された。フランスはこの貿易体制を維持し、ジブチの経済構造を自国の利益に合わせて作り変えた。だが、この変化はジブチ国内の産業や自給自足的な経済の発展を阻害する一因にもなった。多くのジブチ人は港湾労働者や鉄道作業員として従事するようになり、現地の労働環境や社会構造も次第に変わっていった。このように、植民地支配はジブチの経済に深い影響を与えたのである。
植民地支配が生んだ文化の融合
フランスの影響は経済だけでなく、文化や教育の面にも現れた。フランス語が公用語として導入され、学校ではフランスの教育システムが採用され、若い世代がフランス文化に触れる機会が増えた。また、フランスの建築様式が街に導入され、首都ジブチ市には西洋風の建物が立ち並ぶようになった。地元の音楽や料理にはフランスの要素が取り入れられ、ジブチの文化に新たな風が吹き込まれたのである。こうして植民地支配がジブチにもたらした文化的な影響は、現代のジブチにも息づき、多様なアイデンティティの形成に寄与した。
第5章 ジブチの独立と国家形成
フランス植民地からの脱却
1960年代後半、アフリカ全土で独立運動が広がり、ジブチもその流れに呼応するように独立への意志を高めていた。フランスの支配下での生活に不満を抱くジブチの人々は、政治的自治と民族の誇りを求めて立ち上がり、独立を叫んだ。住民投票が実施されると、ジブチ人の多くが植民地からの解放を強く望んでいることが明らかになり、1977年、ついにジブチはフランスからの独立を勝ち取った。こうしてジブチはアフリカで最も新しい独立国家として世界に登場し、人々は新たな希望に胸を膨らませた。
初代大統領ハッサン・グレド・アプティドンの登場
ジブチの初代大統領には、独立運動の立役者であり、多くの支持を集めたハッサン・グレド・アプティドンが選ばれた。彼はジブチの発展と安定のために、強いリーダーシップを発揮し、新しい国の基盤作りに尽力した。アプティドンは一党制を採用し、国家統一を図る一方で、異なる民族間の緊張を和らげることにも努めた。彼の統治下で、ジブチは教育やインフラ整備に力を入れ、若い国家としての道を進み始めたのである。彼の存在はジブチ国民にとって、希望の象徴であった。
独立国家としての最初の試練
独立後、ジブチは多くの課題に直面した。経済的にはフランスの支援を受け続ける一方で、自立を目指す必要があり、国内の産業基盤が未熟であったため、港湾収入に大きく依存する経済構造が課題であった。また、アファル人とイッサ人の対立もあり、民族間の調和を維持することが政治の中心課題であった。アプティドン政権は一党制を通じて安定を図ったが、徐々に民主化を求める声も高まり、国家としての方向性が問われるようになった。こうした試練を乗り越えるために、国全体が一丸となって努力を続けた。
独立と共に芽生えたジブチのアイデンティティ
独立はジブチにとって、新たなアイデンティティを形成する出発点となった。国旗や国歌が制定され、ジブチの人々は誇りを持って自国のシンボルを受け入れた。また、フランス語やアラビア語に加えて地元言語も大切にされ、言語や文化が再評価された。ジブチ人としての誇りと団結心が育まれ、民族の違いを超えた一体感が徐々に形成されていった。ジブチは独立をきっかけに、外部に依存するのではなく、自らの手で未来を築こうとする姿勢を持つようになったのである。
第6章 一党制から多党制へ：ジブチの政治改革
一党制の導入とその意図
独立後、ジブチの初代大統領ハッサン・グレド・アプティドンは一党制の政治体制を採用した。彼の狙いは、民族間の対立を抑え、安定した国家運営を確保することであった。アファル人とイッサ人の対立が国内に緊張をもたらしていたため、アプティドンは統一の象徴として一党制を掲げ、社会を一つにまとめることに尽力した。党の強い統制は、混乱の回避と国の発展を促進するための手段とされ、ジブチ人の生活は政治の安定に支えられる形で進んでいった。しかし、この一党制がジブチ人の自由や政治参加をどのように制限していたのかは、次第に重要な問題として浮かび上がるようになる。
民主化を求める声の高まり
1990年代に入ると、ジブチ国内でも民主化を求める声が次第に高まり始めた。周辺諸国でも多党制への移行が進む中で、ジブチの人々も政治的自由と表現の権利を強く意識し始めたのである。特に若い世代や知識人が中心となり、自由な選挙と多党制を求める運動が広がった。これに対し政府は当初慎重な態度を示したが、国内外からの圧力も加わり、ついに1992年に多党制導入を認める改革が進められることとなった。こうして、ジブチの政治は新しい時代に突入し、国民の手で未来を決める道が開かれた。
多党制導入と選挙の挑戦
多党制の導入によって、ジブチでは初めての本格的な選挙が行われることとなった。しかし、長年の一党制に慣れた政治体制の下では、新しい制度への適応には様々な課題があった。選挙が行われる度に不正や対立が問題視され、ジブチの民主化には数多くの試練が伴った。それでも、多党制の下で国民の声が政治に反映されることにより、ジブチ人の政治意識は確実に高まっていった。選挙を通じて政治に参加する経験を重ねることで、ジブチの民主主義は少しずつ成熟していき、社会全体に新たな活気がもたらされたのである。
民主化がもたらした社会の変革
多党制の導入は、ジブチの政治だけでなく、社会全体にも新しい変革の風を吹き込んだ。自由な意見交換が可能となり、メディアや市民活動も活発化した。教育やインフラ整備の充実が議論され、経済や福祉にも目を向けた政策が増えていった。こうした変化は、ジブチの社会に多様性と活力をもたらし、人々の生活が徐々に豊かになっていくきっかけとなった。民主主義のもとで成長するジブチの姿は、国民にとって誇りと希望の象徴であり、彼らの努力によって未来への道が切り拓かれ続けている。
第7章 ジブチの経済発展と社会変革
港湾都市としてのジブチの成長
ジブチは、その戦略的な位置により、アフリカ東部の重要な港湾都市として成長を遂げた。紅海とインド洋をつなぐジブチ港は、エチオピアなど内陸国の物流拠点となり、地域経済に欠かせない存在となっている。港には大型の貨物船が日夜訪れ、石油や農産物、工業製品が取引されている。特に1990年代からのインフラ投資は、港の拡張と機能向上を進め、ジブチ経済の成長を支えた。港湾を中心とした経済は、ジブチに働く機会を生み出し、人々の生活水準を向上させる大きな力となったのである。
国際援助と経済の多角化
ジブチは外部からの支援と投資に依存する部分が大きいが、これらは経済の多角化に貢献している。アメリカや中国、フランスなどがジブチに多額の援助を行い、インフラや教育分野に投資を続けている。特にインフラの整備が進み、ジブチ市内には新しい道路や公共施設が次々と建設された。また、観光業や情報通信分野など、新たな産業も発展しつつあり、ジブチは単なる港湾依存からの脱却を目指している。こうした変化は、ジブチの自立した経済の実現に向けた重要な一歩である。
社会インフラの発展と市民生活の向上
ジブチでは、教育や医療などの社会インフラ整備も進んでいる。特に教育分野では、多くの学校や職業訓練施設が設立され、若い世代が知識と技能を身につける場が増えている。医療分野でも、新しい病院や医療機器の導入により、より良い治療が可能となり、国民の健康が向上している。これらの発展は、人々の日常生活に直接的な恩恵をもたらし、住民はジブチでの生活に対する満足感を高めている。こうした社会インフラの整備は、ジブチが未来に向けて成長するための重要な土台である。
若者の活躍と未来への希望
ジブチの経済発展の一翼を担っているのは、エネルギッシュな若者たちである。若い世代は、学校や職業訓練を通じて多様なスキルを学び、新たな産業に挑戦している。観光業やIT分野、さらには起業に興味を持つ若者も増え、ジブチにおける革新の原動力となっている。彼らの努力は、ジブチの未来を形作る希望の象徴であり、地域経済のさらなる成長を後押しするものでもある。若者たちの意欲と創造力は、ジブチが新たな時代へと飛躍するための大きな力である。
第8章 戦略的拠点としてのジブチと国際関係
ジブチの戦略的位置とその魅力
ジブチはアフリカとアラビア半島に挟まれ、紅海とインド洋を結ぶ地点に位置する。この地理的優位性が、世界中の大国を引きつける大きな理由である。海上貿易の要所であるバブ・エル・マンデブ海峡を抑えることで、ジブチは国際的な物流の拠点としての重要性を持つに至った。特に、石油輸送のルートとしても不可欠であり、このためアメリカや中国、フランスなどがジブチに軍事基地を構えるなど、戦略的な価値が高い。ジブチの存在は、現代の地政学において不可欠なピースである。
世界各国の軍事基地とジブチの役割
ジブチには、アメリカやフランス、中国といった国々が軍事基地を設置している。アメリカはテロ対策の拠点として、フランスは旧植民地時代からの影響力維持のため、中国はアフリカへの影響力拡大を目指してそれぞれ基地を構えている。こうした軍事拠点はジブチにとって貴重な経済的資源であり、基地の設置費用や関連サービスが収入源となっている。一方で、ジブチは多国籍の軍事プレゼンスを管理する難しい立場にあり、国際的な関係を維持するための微妙なバランスが求められている。
ジブチの外交政策と中立の姿勢
ジブチは地政学的な拠点でありながら、他国との争いを避ける中立的な外交方針を採用している。大国が集まる中、ジブチ政府は巧妙な外交戦略を用いて、各国との関係を良好に保ちつつ、自国の利益を守っている。この中立姿勢により、ジブチは国際的な会議や協定の場でも信頼される存在となり、外交の舞台で重んじられている。ジブチの中立的な姿勢は、対立する大国間の橋渡し役としても機能し、国際社会において独自の影響力を持つことに成功している。
国際関係がもたらすジブチの未来
ジブチの戦略的立場は、地域の安定に不可欠であると同時に、今後の発展にも多くの可能性を秘めている。軍事基地や港湾を通じた収入は、ジブチの経済に多大な貢献をしているが、国際社会での役割はそれにとどまらない。ジブチは平和と協力の象徴としての地位を築くことで、アフリカにおける政治的な存在感を強めつつある。国際社会との連携を深めることで、ジブチは未来に向けてさらに大きな影響力を持つ国となるだろう。
第9章 現代ジブチの社会問題と人権課題
経済格差と都市部の急成長
ジブチ市は急速に発展を遂げ、華やかなビル群やインフラが整備されているが、地方部との格差は広がりつつある。多くの若者が仕事を求めて都市に集まる一方、地方では依然として経済的機会が限られている。急成長する都市部では生活コストも上昇し、低所得層にとって生活は容易でない。ジブチ政府は地方への支援や雇用機会の提供を目指しているが、貧富の差は社会全体の安定に影響を及ぼしている。経済の恩恵を全体で享受するには、都市と地方のバランスある発展が鍵となる。
若年層の失業と教育の課題
ジブチの人口の多くは若者であるが、彼らの失業率は高い。多くの若者が教育を受けているが、卒業後の就職口が限られているため、失業は深刻な問題である。政府は職業訓練やスタートアップ支援などを通じて、若者の雇用創出を目指しているが、さらなる取り組みが求められている。教育の質を向上させ、実践的なスキルを学べる場を増やすことが、若者たちの未来にとって必要不可欠である。彼らが持つ可能性が、ジブチの将来をより明るいものにするためには、教育と雇用の充実が欠かせない。
人権問題と女性の地位向上
ジブチでは女性や子どもを取り巻く人権問題も課題である。特に女性の権利向上は国際的な関心を集め、政府も積極的な支援を始めているが、依然として女性の教育や就業機会は制限されている。市民団体や国際機関の協力を得て、ジブチ政府は女性の権利向上や児童労働の廃止に取り組んでいる。教育を受ける機会の提供や法的保護の強化は、ジブチ社会の健全な発展に欠かせないものである。すべての市民が平等に権利を享受できる社会を築くため、ジブチは変革の途中にある。
環境問題と持続可能な発展
ジブチは気候変動による水不足や砂漠化の影響を大きく受けている。これらの問題は農業や漁業に悪影響を与え、地方経済や住民の生活に直結している。近年では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの取り組みが進んでおり、持続可能な発展を目指している。環境保護はジブチだけでなく地域全体の安定に関わるため、国際協力の必要性も高まっている。持続可能な資源利用を推進し、未来の世代により良い環境を残すために、ジブチは新たな挑戦に取り組んでいる。
第10章 未来のジブチ：持続可能な発展と展望
環境への挑戦と新エネルギーの可能性
ジブチは気候変動による砂漠化や水不足といった深刻な環境問題に直面している。だが、こうした課題に対し、再生可能エネルギーを活用した持続可能な発展が進められている。太陽光や風力発電の導入により、ジブチは将来、輸入燃料に依存しないエネルギー自給国家を目指している。エネルギーの安定供給は環境負荷の低減にも貢献し、地域の安定にもつながる。こうした取り組みは、未来のジブチの暮らしを守るための重要な一歩であり、気候変動に立ち向かう国際的なリーダーとしての地位を築く可能性も秘めている。
インフラ拡充と新たな経済拠点の誕生
ジブチは経済基盤の強化を目指し、道路や港湾、鉄道といったインフラ整備に積極的に取り組んでいる。特に、エチオピアなど内陸国とジブチを結ぶ鉄道網の拡張は、ジブチを物流の中心地とする大きな鍵である。こうしたインフラの発展により、ジブチは「アフリカのゲートウェイ」として経済的な重要性を高めつつある。さらに、通信インフラも整備され、ビジネスの新たな可能性が広がり、国内外の投資家から注目を集めている。インフラ拡充はジブチ経済の強化と安定に直結しているのである。
ジブチ人による新たな企業の創出
ジブチでは、若い世代が起業家精神を持ち始めており、新しいビジネスが次々と生まれている。彼らはテクノロジーや観光業、アグリビジネスといった分野で革新的なアイデアを実現し、ジブチの経済を内側から活性化させている。起業家育成プログラムや政府支援によって、起業のためのスキルや資金を得る機会も増加している。こうした若い力は、ジブチに経済的自立と活力をもたらし、未来への希望となっている。若者の情熱が、ジブチの経済をさらに強固なものにし、国の発展を牽引していくのである。
地域連携と国際協力の未来
ジブチはその地理的な位置を活かし、アフリカ諸国や国際社会との連携を強化している。地域の安定や経済成長を目指し、ジブチは隣国や国際機関と協力して多くのプロジェクトを進めている。例えば、エネルギー供給や交通網の整備を通じてアフリカ全体の発展に貢献する姿勢を示している。さらに、国際協力によって環境保護や平和維持活動にも力を入れており、ジブチは持続可能な未来を築くパートナーとしての地位を確立しつつある。地域と世界におけるジブチの存在感は、未来のさらなる発展への期待を感じさせる。